10月, つぶやく:海時間

海時間。
山時間を補うような時間が流れている。
違うもの同士が補い合う。

釣具屋のおじさんは不愛想をはるかに超えた怖さで、
はじめての釣り体験のうちらはビビリまくり、
顔は引きつり歪んだ笑いを返すしかなかった。
相談できる雰囲気ではないので、
私たちは釣具店のフロアで商品の説明欄を読みつつ、「あっ、これ、これでいいよね?」とコソコソと小声で相談しながら、
おじさんの突き刺さるような視線を感じつつ、
足りないものを購入すると海に向かった。

浜辺に降りると、
そんなことは波音にかき消されてしまった。

波音は大きな音なので、
ほんの数メートル離れた友人と話すだけでも大声になる。
だからワイワイするよりも寡黙になる。
少なくとも私たちはそんな感じだった。
それでいて、地球そのものである海を前にした時、
全ての人間がひとつのスピリットのように感じて、
個別性は信じられなくなる。
海は本当の意味でのコミュニケーションがはじまる場所。

1日中、海にいると、波音が耳の奥にしばらくのあいだ続くことになる。
留まり続ける波音は癒しそのもので、
正反対のものや、すでに役に立たなくなったものを、
私の心の地平線の果てまで、
心の深いところに静かに広がる海の底へと運び込み、
全てを愛という波に変えてしまう。


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